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『朗読者』 ベルンハルト・シュリンク (トラキチ)
ベルンハルト シュリンク
新潮社
¥ 1,890
(2000-04)
この作品のTBはこちらの記事にお願いします。
元記事はこちら
<ヘッセの『車輪の下で』に比肩する心にズシリと響く作品。>

確かヘッセの『車輪の下で』以来のドイツ文学。
まさに懐の深い読書が楽しめる一冊。

本作は1995年に刊行されて以来、数多くの国でベストセラーとなっている。
日本においては新潮クレスト・ブックスにて2000年に刊行、そして2003年に文庫化、翌2004年からは日本の文庫本におけるステータスシンボルと言っても過言ではない“新潮文庫の100冊”にラインアップされている。
読み終えて、新潮文庫の100冊の威厳を保ってる作品であることを確認できて胸をなでおろした次第である。
尚、本作は本年6月『愛を読むひと』というタイトルで映画化される予定。
物語は三部構成になっていて、終始主人公であるミヒャエル・ベルクのモノローグ的なもので語られる。

まず第一部、主人公のミヒャエルは15歳。ひょんなことから21歳年上で車掌をしているハンナと恋に落ち逢瀬を重ねる。
ハンナはミヒャエルに頻繁に本を朗読して聞かせて欲しいと求めるのであるが、ある日突然失踪する。

第二部ではなんと法廷で二人は再会する。
ここではナチ問題が取り上げられ、ハンナが戦犯者として取り上げられる。
いろんな秘密が露わになってくる過程でミヒャエルが取った行動に感動せずにはいられないのである。

そして第三部、これはもう衝撃的な展開としかいいようがないですね。
戦争の影ってこんなに深く作者に根付いていたのかと思わずにはいられない展開ですわ。

この作品は私的には“反戦小説”と“恋愛小説”の融合作品であると思っている。
そしてどちらに重きを置くかは読者に委ねられているのであろうと解釈するのである。

とりわけ、少なくとも同じ“同盟国”として第二次世界大戦を戦った日本の国民として生まれた読者にとって、忘れつつある過去を思い起こさせる一冊であると言える。
読書にとって心の痛みを強く感じることを余儀なくされる機会を与えられる。

翻訳小説の醍醐味だと思っているその心地よさに酔いしれつつ、自分自身の道徳心にも自問自答したい作品である。
いかに人間って潔白に生きれるかどうか。
愛を貫くことも心を打たれるのであるが、潔白に生き抜くということは本当に尊くて難しい。
あと付け加えたいのは、加齢による人間の変化というか成長ですね。
第一部で15歳の時のハンナがミヒャエルに取ったいきなり失踪という行動。
辛かったに違いありません。でも心の糧としてずっとその後踏んばるんですね。
そして第三部での出来事、もっともっと辛いはずなのに年齢を重ねて成長したミヒャエルは強く受け止めているように感じられるのですね。
これはミヒャエルの確かな成長の軌跡の物語とも言えそうですね。

読書ってこんなに奥深いものであったのであろうか。
この余韻の心地よさっていったいなんなんでであろう。
海を越えて作者シュリンクに感謝したいなと強く思った次第である。

2人の年齢差は21歳。恋愛に年齢差がないように読書に国境はないということを痛感した。
なぜなら読み終えて2人の気持ちが本当に切なすぎるほどよくわかるからである。
おそらく再読すればもっともっとわかるであろう、離れていてもお互い心を開いていたことを・・・
何度も読み返したい名作に出会った喜び、それは読書人にとって究極の喜びにほかならないのである。

少し余談ですが、光文社古典新訳文庫にて本作の訳者である松永美穂氏がヘッセの『車輪の下で」を訳してます。機会があれば手に取りたいですね。名作です、何年振りだろうか(笑)

posted by torakichi | 20:54 | メンバーズレビュー(トラキチ) | - | - |
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