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『灰色の輝ける贈り物』 アリステア・マクラウド (四季さん)
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【船】…今でも時々、朝の4時に目を覚まして、寝過ごしたかと不安になる「私」。しかしそこには既に船はないのです。物心ついた頃から傍にあった船、そして家族の思い出。
【広大な闇】…1960年6月28日はジェームズの18歳の誕生日であり、自分で決めた解放の日。生まれ育ったケープ・ブレトンの煤で覆われた炭坑町を出て行く日なのです。
【灰色の輝ける贈り物】…朝8時前に家を出たきり、家に帰っていないジェシー。それまではいつも11時半までに帰宅していたジェシーは、12時になってもビリヤードをしていました。
【帰郷】…モントリオールに住んでいるアレックスは、両親と一緒に列車でノヴァ・スコシアの東の端に向かう列車に乗っていました。ケープ・ブレトンの祖父の家に行くのです。
【秋に】…海と炭坑の町の中間の小さい農場に住んでいる「僕」の一家。父は夏は自分の農場で働き、冬は炭坑の中で働く生活。母は冬の前に馬を売ろうと考えていました。
【失われた血の塩の贈り物】…4000キロもの旅をしてきた「私」は、現地の少年たちの中の1人ジョンの家へ。老人に夕食に誘われ入った家の中で、老婦人が一瞬敵意を見せます。
【ランキンズ岬への道】…1970年代半ばの7月、26歳のキャラムは車で祖母の家へと向かっていました。その日は、1人暮らしの祖母をどうするか、一族が集まってくる日なのです。
【夏の終わり】…8月の終わり。炭坑夫たちは、次の仕事までの間、正真正銘の密造ウィスキーを手に、ケープ・ブレトンの西海岸で寝そべっていました。(「THE GOLDEN GIFT OF GREY/ISLAND」中野恵津子訳)
作者の生まれ育ったというカナダのケープ・ブレトンが舞台となった短編集。31年間に及ぶ作家生活で、わずか1編の長編と16作の短編しか発表しなかったという寡作な作家。この「灰色の輝ける贈り物」には、「Island」という短編集に収められた前半の8作品が収められています。
ケープ・ブレトンは、「赤毛のアン」のプリンス・エドワード島の東隣という島。自然環境という意味では、「赤毛のアン」とそれほど変わらないのではないかと思うのですが、そちらからは想像がつかないほど厳しい自然が描かれています。人間を拒否しているとしか思えないほど厳しく、陰鬱さまで感じさせられてしまう自然描写。「赤毛のアン」が、まるで夢物語のように感じられてしまうほどです。そしてその地に根ざしている祖父母や両親たちの逞しい生活力。「生」の持つ強い力を感じますし、そこには必然的に「性」も存在し、ありのままに描かれていきます。その根底にあるのは、かつて故郷を追われた先祖たちの孤独と悲哀でしょうか。ゲール語訛りの言葉に、かつての故郷が垣間見えるようです。そしてそのようにして人生を全うしようとしている親や祖父母とは対照的なのが、彼らを冷静に見つめる子供たちの目。親たちがどれほど努力しようとも、子供たちはそこから抜け出そうとしていくのですね。確実に時代が移り変わっていくのが感じられて切ないです。おそらく悲惨だったスコットランド時代の生々しさも、あっという間に薄れていってしまうのでしょう。そしてそれらが淡々と書かれているだけに、逆に深く豊かに感じられるようです。
炭坑夫の息子として育ち、子供の頃から勉強や読書が好きだったというマクラウドは、「船」の「私」のような存在だったのでしょうか。この8編の中で特に好きなのは、「ランキンズ岬への道」。表題作の「灰色の輝ける贈り物」も良かったです。

posted by torakichi | 21:49 | メンバーズレビュー(四季さん) | - | - |
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