CALENDAR
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>
Search this site
NEW ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
MOBILE
qrcode
OTHERS


“世界中から取り寄せました”のキャッチで本好きの心を揺さぶる新潮クレスト・ブックスの感想TBお待ちしております。
<< 『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ (トラキチ) | TOP | 『灰色の輝ける贈り物』 アリステア・マクラウド (四季さん) >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

posted by スポンサードリンク | | - | - | - |
『遺失物管理所』  ジークフリート・レンツ (四季さん)
この作品のTBはこちらの記事にお願いします。
元記事はこちら

24歳のヘンリー・ネフは、列車の車掌の仕事から大きな駅の遺失物管理所へと異動になります。一緒に働くのは上司のハネス・ハルムス、先輩社員のアルベルト・ブスマン、そしてパウラ・ブローム。ハルムスは出世の可能性の閉ざされた遺失物管理所に来てしまったヘンリーに、もう一度列車の乗務員として働こうという気はないのかと尋ねますが、ヘンリーに出世するつもりはまるでなく、ただ気持ちよく仕事ができれば十分だと答えます。(「FUNDBURO」松永美穂訳)
駅という場所は、これから旅立つ人や帰ってきた人、単に通り過ぎていくだけの人々が集まる、それだけでもドラマを感じさせる場所。そこに落ちていた物といえば、当然様々なドラマがあるでしょう。この物語は、遺失物管理所に集まってきたそんな様々な落し物が紡ぎだす人間模様の物語かと思い読み始めたのですが… それは単なる背景に過ぎなかったのですね。
物語は、遺失物管理所に異動してきた24歳のヘンリー・ネフを中心に語られていきます。 24歳になってもまだまだ少年のように無邪気で、明るく人懐こいヘンリー。無邪気と言えば言葉はいいのですが、どちらかといえば大人としての責任感が欠落し、やる気のない人間。大きな陶磁器の店「ネフ&プルムベック」の創設者が祖父であったり、伯父は連邦鉄道の本部長であったりと、お金に困っていない恵まれた環境に生まれ育ったことが良く分かるお坊ちゃんぶりです。同じ職場のパウラを気に入れば、人妻にも関わらず無理矢理誘いだしたり、悪ふざけをしたり。周囲の人々にもそんな軽い行動を頻繁に揶揄されています。しかしそんな彼だからこそ、遺失物管理所の気持ちの良さを感じ、想像力が刺激されるのを楽しむことができるのでしょうね。落し物の受取人は、その遺失物が自分の物だと証明しなければならないのですが、ヘンリーは落とした物の特徴を言わせるだけでは飽き足らず、芸人にはナイフを投げさせ、女優には台詞を語りかけ、子供には笛を吹かせます。そんなところもとても楽しいのです。
もちろん明るいだけの物語ではありません。ヘンリーがその仕事を通じて親しくなるのは、サマラ出身のバシュキール人数学者・フェードル・ラグーティン。このラグーティンはヘンリーと同じ24歳でありながら教授という確固たる地位を持っています。工科大学からの招きを受け、期待を胸にやってきたドイツへ。しかしここで彼は言われない人種差別を受け、暴走族の若者に暴力を振るわれます。職場ではリストラの対象となってしまう人間もいます。彼らを見て、素直に胸を痛めるヘンリー。能天気に見えていても、実は人間としての基本となる部分を失っていないのです。
彼を見ていると、同じ物事でも受け止め方によって様々な面が見えてくるということを再認識させられます。もちろん遺失物管理所の仕事もそうですし、人間関係もそう。曇りのない純粋な眼差しこそが、人々が無くしてしまい、遺失物管理所に探しに来るものなのではないかとそんな気さえします。
どこか郷愁を感じさせるような物語。明るさがありながらも、どこか物哀しい読後感が残りました。
posted by torakichi | 21:32 | メンバーズレビュー(四季さん) | - | - |
スポンサーサイト
posted by スポンサードリンク | 21:32 | - | - | - |