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『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ (トラキチ)
この作品のTBはこちらの記事にお願いします。
元記事はこちら

<まるで美しい映像の映画を見ているような陶酔感を味わえる短編集。>

まず著者のジュンパ・ラヒリについて簡単にご紹介しよう。
1967年ロンドン生まれ。現在まで本作の他に『その名にちなんで』(新潮文庫)(2004)と『見知らぬ場所』(2008)(新潮クレストブックス)を上梓。
受賞歴は本作に収録されている「病気の通訳」でО・ヘンリー賞、本作でピュリツァー賞とヘミングウェイ賞を、『見知らぬ場所』でフランク・オコナー国際短篇賞を受賞している。
その昔、何カ月も辞書を引きひき訳読したあとで、ついにフランスの小説やイタリアの十四行詩をつっかえずに読めるようになったときも、似たような心地よさがあった。そんな瞬間には、世の中はうまくできている、がんばったらいいことがある、まずいことがあっても結局どうにかなるのが人生だ、と思えたものだ。(病気の通訳より引用)

訳者である小川高義さんの簡潔で美しい訳文が印象に残る。
違和感なく読ませるってその訳者の実力以外のなにものでもありませんよね。

作者の両親がカルカッタ出身のベンガル人で、本作にもインド国内の話2編以外はアメリカで暮らすインド系移民の人々が登場するのが特徴。
私自身、あんまり翻訳本を読まない理由として大きく二つの理由がある(というかあった)
まず、文化の違う人が書いているのでどうしても共感し辛い点。
そして、もうひとつは訳者を介しているので読みにくくかつ読み取りづらい点。

本作を読んで上記2点は杞憂に終わったことに気付いたのである。
前者は作者の力、後者は訳者の力である。
本作すべてに通じることであるが、この作品の素晴らしい点は登場人物のほとんどの背景がアメリカで住むインド系移民でもともと文化が違うのですが、“人間の本質的なものには変わりはない”ということを読者に知らしめてくれているところ。

たとえ翻訳本であれ、文化の違いがあれども、読書の奥行きの深さを陶酔出来る名作であると言えそうだ。

特徴としたら端正な文章という言葉があてはまるのであろう。
あとは一編一編が味わい深くって余韻が強く心に残るといったところ。
“言外の意味を汲み取る”ことができるんですよね、というかそれがこの作家の高い評価の大きな理由であると断言したい。

くしくも、航空機内でこの本を読み始めたのであるが、それはこの作品を味わうのにはかなり場違いであったと後悔している。
流し読みは作者に失礼であって、この作品集はじっくりと心を落ち着かせてコーヒーをすすりながら読むべき本である。

特に秀逸なのはラストの「三度目で最後の大陸」。
他の作品は総じてウィットに富んでユーモラスな部分が目についたのであるがこちらは繊細でかつ感動的。
100歳を超えた老女と若妻の対面のシーンは本当に感動的で脳裏に焼き付いて離れない。
思わず目頭が熱くなった。ちょっと涙腺が脆いのですが(笑)、二度読んじゃいました。
私的には作者の背景等を考慮すると、愛する両親に対するオマージュ的作品とも捉えることが出来たのである。

あとちょっとドキッとさせられる「セクシー」とО・ヘンリー賞受賞作の「病気の通訳」が個人的にはお気に入り。
でも他の編が気に行っても全然おかしくない力作ぞろい。
なんというか、美しい映画9作を見終わった気分に浸れる感覚ですね。
読者が入り込める世界をデビュー作にして放った作者の能力を大きく讃えたいなと思うのである。

ちょっと脱線するけどかなり美形の作家さんです。新潮文庫で買って是非あなたの蔵書の一冊に加えて欲しいなと切に思います。
機会があれば講談社英語文庫でも読めるので原書で挑戦したいなとも思うのであるが(苦笑)

新しい才能高き作家にめぐり合えた時の喜び・・・これだから読書はやめられない。
あなたも是非その余韻に浸ってください。
posted by torakichi | 16:18 | メンバーズレビュー(トラキチ) | - | - |
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