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『ある秘密』  フィリップ・グランベール (トラキチ)
フィリップ グランベール
新潮社
¥ 1,680
(2005-11)
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元記事はこちら

父と母は何か隠している……。ひとりっ子で病弱なぼくは、想像上の兄を作って遊んでいたが、ある日、屋根裏部屋で、かつて本当の兄が存在していた形跡を見つける。両親の秘密とは何か。ナチスによる弾圧と虐殺のはざまで、二人に何が起ったのか。一九五〇年代のパリを舞台にした自伝的長編。高校生が選ぶゴンクール賞受賞作。(新潮社HPより引用)

物語の冒頭から秘密の影はすでに現われている。読者はまず、その影を追うように物語へと引き込まれ、次第に、戦争や愛、そして深い絶望と孤独の中へ踏み込んでいく。ごく普通の一家の背後に隠されていた、人間の苦しみの全てを凝縮したような過去。それでも真実を受け止めようとする主人公の強い意志と、必死に生きようとする人々の姿が、容易に感動という言葉では語り尽くせないほどの切実なリアリティを持って、胸に迫ってくる。(裏表紙・作家島本理生さんコメント文引用)

<両親の秘密を通してあるひとりの少年が立派に成長する物語、戦争の痛ましさを分かち合える作品でもあります。>

『ちいさな王子』『赤と黒』(ともに光文社古典新訳文庫)の翻訳で著名な野崎歓訳。
この作品はわずか150ページあまりですが、内容的にはとっても密度の濃い作品だと言っても過言ではないでしょう。
最初、ファンタジー作品かなと思って読み進めたのですが、ずっとずっと深い物語でした。
清々しいという表現があてはまるかどうかは疑問ではあるが、主人公が両親を擁護する成長ぶりは本当に頼もしい。
物語の冒頭のひ弱さを伴った頼りなさが読者には焼き付いているだけに余計にそう感じるのである。

本作で描かれている悲劇はいわゆるホロコーストの世界ですね。
ホロコーストとそして両親の“ある秘密”とを本当に巧みに融合しています。
世界は本当に広くって、私たち日本人って第二次世界大戦=太平洋戦争と思いがちだが、ヨーロッパでも本当にいろんな問題があったのですね。
被害者と加害者ってある意味紙一重なのかもしれません。
本作を読んで痛感しました。
あと注目すべき点を書かせていただくと、この作品は作者の自伝的長編なんだけども、日本ではあんまり戦争のことを題材とした作品って近年は少ないような気がします。
でもこの作品は2004年度に刊行された作品で、“高校生が選ぶゴンクール賞”に選ばれているのですね。
どちらかと言えば、日本の高校生だったら戦争という題材だけで顔を背けそうな兆候があるのかな。
読まず嫌いという点とあと、題材的に売れにくいので書く機会を逸しているのでしょうね。

作者は人類の歴史として過去のことを受け入れている。
その寛容さが主人公に乗り移った感が強いのですね。
だから、取りようによったら許せない両親をも受け入れているのでしょうね。

まあ主人公の両親って本当に文章を読んでるだけでも素敵なんですね(笑)
亡くなった兄と義母には申し訳ないのですが、ふたりは結ばれるべくして結ばれたとどうしても思っちゃいました。
内容自体は非常に重いのですがロマンティックな部分も注入、作者の筆力は凄いと思います。

訳者あとがきを読むと時は流れ、ドイツでも訳書が刊行されたみたいである。
『朗読者』をフランス人が読み、本書をドイツ人が読む。
平和な時代になったものである。

最初は架空の兄に守られてた主人公が見事に成長する物語。
フランスの高校生のようにはいかないけど、少しでも自分自身も成長したいと思わせてくれた作者に感謝したい。
“加害者・被害者抜きにして、悪い歴史は決して繰り返してはいけない。”
作者の強い想いをしっかりと捉えて本を閉じることが出来た。
posted by torakichi | 16:32 | メンバーズレビュー(トラキチ) | - | trackbacks(0) |
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