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『ソーネチカ』 リュドミラ・ウリツカヤ (トラキチ)
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元記事はこちら

本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカは、一九三〇年代にフランスから帰国した反体制的な芸術家ロベルトと結婚し、当局の監視の下で流刑地を移動しながら、貧しくも幸せな生活を送る。一人娘が連れてきた美少女ヤーシャがあらわれるまでは。最愛の夫の秘密を知って彼女は……。温かい感情が湧きあがるロシアの中篇小説。(新潮社HPより引用)

この小説の主人公は不思議な人たちである。見るからに幸せそうなときに「なんて幸せなんだろう」と考えるのはともかく、親しい人に裏切られ、失望させられて、たいていの人間なら激怒し絶望しそうなときでも、何か悦ぶべきことを見つけて、やはり「なんて幸せなんだろう」と考えている。
そんな彼女に、作者は無垢ゆえの神々しさを見ているのだろうか。たぶんそうではあるまい。とにかくそういう人が作者の頭から生まれてしまったのであり、そうやって生まれた人を、作者はただそういう人として描いた。人間を祝福する上で、これ以上正しいやり方があるだろうか。(裏表紙・柴田元幸氏コメントより引用)

<本の虫がもたらせてくれた崇高な愛情が詰まった作品。幸せについて再考させられます。>

『ペンギンの憂鬱』(新潮クレスト・ブックス)や『初恋』(光文社古典新訳文庫)でも著名な沼野恭子訳。
ロシア文学、はたしていつ以来なのだろう。
世界を旅している気分にさせてくれる新潮クレスト・ブックスシリーズのおかげですね。
さて本作、どちらかと言えば女性向きかなと思ったりする。
主人公ソーネチカの本当に達観した人生に対する共感は、女性の方が理解しやすいと考える。
男性読者の私が本当に胸をなでおろした点は、やはり夫である元画家のロベルトの後半露わになる秘密を男性に対して揶揄する姿勢じゃなくて自然なこと、もっと言い換えればロベルトに対するリスペクトを損なわずに描かれている点。
これは作者リュドミラ・ウリツカヤおよび訳者沼野さんの大いなる力だと思うのであるし、その部分が崩れていたら作品としての評価はガタ落ちだったような気がするのである。

あと、読解力云々よりもやはり人種的(ユダヤ人)なことに対する認識、ロシアの背景的な部分の知識の有無によって感じ方が違ってくるでしょうね。
これは描かれている年代(ロベルトとの図書館での出会いが第二次世界大戦勃発後)はもちろん、この作品が書かれた時期(連邦崩壊直後)にもかかわってくるのである。
ちょっと深く洞察することができなかったのは残念であるが、概ね下記のように捉えて読んでみた。

世界は広い、そして本を読むことは勉強になる。
結果として本を読むことによって養われた幸せに満ちた人生。
たとえ本が虚構(フィクション)の世界であっても、それを現実において代謝するエネルギーに変えている。
だから主人公は夫との図書館での出会いを決して無駄にしません。
これは類まれな才能である、羨ましい限りの。
そうですね、物事に対してすべて前向きに吸収できるのですね、ソーネチカは。
たとえ世間一般では不幸としか思えないことでも。
どんな状況下におかれても、やさしさを絶やしません。
実娘であるターニャに対してと同様、他人であるヤーシャに暖かい眼差しで接することができるんですね。
ここは凄く胸を打たれるところですわ。

主人公ソーネチカのように“本の虫”とまではいかない私であるが、本好きの端くれとして少しでも大らかな気持ち、大らかな人生を過ごしたいなと思った次第である。
この作品は私たち本好きの背中を押してくれる恰好の一冊なのである。

本人にとっては当たり前のこと(平凡)が実は非凡である。
読書によって培われた大いなる人徳・財産ですね。

是非あなたも確かめてください、きっと余韻に酔いしれることだと思います。
posted by torakichi | 11:47 | メンバーズレビュー(トラキチ) | - | - |
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